【WJ記事_12】パンフレットの存在価値-その2-(2021/7/25_127号)

パンフレットの適正コストは年間売り上げの何%か
両親向けのパンフは新郎新婦に渡す武器


─ 両親向けのパンフは必要か否か

  前回に引き続き、パンフレットについてお話していきます。パンフレットを作る際に言われることのひとつに、両親向けのパンフレットは必要かという話があります。理想的には作った方がいいです。
しかし、両親向けには本気を出して作らないと、手を抜いて作れば親をなんだと思っているんだとなりますし、立派に作ろうが、文字が小さすぎて読めなかったら元も子もありません。実際に、未だに資料請求ボタンは押されています。
  中には作らなくてもいいタイプの店はあるとは思いますが、親御さんが心配していることを先回りして伝えてあげることがすごく大事なポイントです。新郎新婦が、僕たちこういう式場を決めたと言っても、親からうっちゃられることは少なくないと思います。子供の判断を信用しない親もいるでしょう。こういうことを防ぐためには有効になるのです。
本来は、新規で新郎新婦と接したプランナーは、親御さんにこんなことを話してくださいと言っているかもしれませんが、子供は親に言葉をかぶせられたら、わかりました(しょぼん)となってしまう人は多いので、式場が二人に武器を持たせるという気持ちで、親御さん向けは作った方がいいと思います。

難しい言い方ですが、両親向けに専用で作る会社もあれば、新郎新婦向けと合わせたひとつで格式などを作りながら、感じ取らせるものもあります。パンフレット自身が、親御さん対策も含めたパンフレットになっているときは、両親については両親ガイド的なもので十分でしょう。少し若作りしたようなパンフレットを作った時は、両親用は別途もっとしっかりしたものが必要になるでしょう。
では、パンフレットを作成する際のコストは、どのくらいを目安にすればいいかというと、1バンケットの場合、売り上げ(3億~5億)の1%を2年間もしくは3年間使う。年単位で見ると売り上げの0.5%くらいが目安になると思います。撮影は広告用も含めてなので、それを入れると0.7~1%くらいかなと思います。
冷静に見れば、年間売り上げが3~5億円くらいまでの会場なら1%くらい。それよりも売り上げが多いところは、ページ数が増える、写真の点数が多いなどはあるものの、そこからはあまり上がらないものです。例えば年間150組で、4憶5000万円の売り上げのイメージ会社でいくと、パンフレットが仮に200万円で2年、撮影が400~600万円で2年とすると、9億の2年間で600~800万円くらいになります。
ゼクシィなどの広告の標準値が、人気店で言えば、仮に150組取るのに3000万円で、成約単価20万円。2年で6000万の広告費プラスパンフレットなどをいれて7000万円弱という計算が成り立ちます。2年で計算するのは、トレンドの変化とロットの問題と、モデルの版権の組み合わせを考えると2年周期が美しいが、ずるずる行くケースもあるし、成功していれば変える必要ないので、延長したとして4年です。
また、大手ではない限り、撮影も2~3年に一度しないとやり方を忘れてしまうので、時代についていくために行う必要はあるでしょう。人気店になれば、チャペルやバンケットの写真を変えることはあまりないので、そのあたりは少しコストを抑えられると思います。細かく見ればチャペルやバンケットの花のトレンド、クロスのトレンドも変わるので、人気が続けば4年、なければ2年、平均すると3年以下になります。


─ パンフレットはどのタイミングで変える?

  パンフレットは、変えて伸ばせる可能性が高い時はお勧めしますが、変えてしまってもっとチープになってさらに落ちることもあります。予算をかけなさすぎたケースと、トレンドがわからないケースがあります。前回パンフレット作成時の式場側のスタッフが優秀だったから良かったが、その後そのスタッフたちが抜けて業績が落ちていたら、その中での好みでパンフレットを作ってしまったら、もっと落ちるかもしれないということです。
“負け組”が考える理想は、そのままやるともっと負けるということが多く、例えていうなら「モテない人がおすすめするデートスポットはダメなんじゃないの?」みたいなことと一緒で、そこの知見がないケースがあります。究極的に言うと、その知見がない中で選ぶデザイナーも勝たす力のないデザイナーを選んでいるかもしれないので、恐ろしいことに“詰んでいる”可能性も多々あります。
また、相談されるのが、パンフレットを作ったばかりで、これでいいんじゃないですかとよく言われます。そういう時はだいたいリニューアルが終わって、パンフレットを作ってから、森山は呼ばれるんです。なぜか。おかしいなぁ、客が来ないなぁと。撮影やリニューアルも手段ですから、戦略が先ですよ!といっても、手遅れが多いです。
ですから、パンフレットの寿命が来たから変えるというよりは、その前の改装やブランドチェンジ、撮影などの先の打ち手がある。そこからパンフレットを作るケースと、版権切れだから作ると両方の場面があります。しかし、この話を聞いてパンフレットを作りましたが、失敗したじゃないかと言われても困ります。パンフレットを作る会社も気を付けないといけないからです。


─ パンフレットを依頼する会社をどう見極めるか

  パンレットを作る会社を選ぶ際は、式場サイドからすると、自分たちの戦略が正しいという仮定のもと、そのパンフレットに対して的確に要望に応えられる会社をコンペで選べばと思います。昔、お試し価格が出てきた会社で失敗したケースを知っていますが、多少安かろうが、お試しで業績が落ちたら元も子もありません。目利きも含めて自信があればコンペをすればいいですが、それは価格だけで決めるものではありません。
目利きや戦略に自信がないなら、コンペではなくプレゼン(できれば有料の)をしてもらえればよいでしょう。
その時にはパンフレットが良いとか持ち上げられたりすることではなく、また別の第三者を呼んで、それぞれのパンフレットに対する整合性を確認してもらうという手もあります。それは改装でもパンフレットでもそうですが、あとは第三者を使うのか、判断基準をエクセルで評点かするのか、あとは複数の勝ち筋を持てているブレーンに頼むのはいいと思います。でも成功事例がワンパターンだと、上手くいかないことが多いです。永遠にAで勝ったとだけ出している会社は、Aでのノウハウ以外はチープだったということがあるからです。
業界誌などにのっているコンサルも、うちも含めてですが、ほとんど勝たせていますかという話。勝った事例だけが紹介されているだけなので、何勝何敗で見てみると負け越しているかもしれないですよと。数少ない勝ちに縋ってやるよりは、冷静に勝ち負けの経験値とプランBを持っているとか、もっと根掘り葉掘り聞いて決断した方がいいと思いますし、私も割り切って言ってしまえば、クリエイター能力が高い会社が、逆に他の能力が低いこともあるし、反対にコンサルは強いが、クリエイティブが弱い会社もあります。
どうしてもこのデザイナーを使いたいなら、そのデザイナーを使って私が監修したり、アドバイスするという仕事も受けています。


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