ー POINT ー
ゼクシィ来店特典の変更で集客ブレーキの要因に
─ SNSなどの負の情報はそのまま「行かない理由」に
今年一年を振り返ってみると、やっぱり「閉塞感」という言葉がいちばんしっくりきます。
婚礼の市場がじわじわ削られていくのを横目に見ながら、業界全体も媒体も取り巻きのプレイヤーも、みんなそれぞれの「正義」と「都合」で動いて、その結果として今の苦しい状況を自分たちで作ってしまった──そんな感覚が強い一年でした。
ただ、悲観ばかりしていても仕方がないので、ここではいったん今年を整理して振り返りつつ、来年、とくに「1月商戦」をどう位置づけて、どう舵を切るべきなのか、自分なりの展望と対策を今回と次回、まとめておきます。
今年の振り返り
─ 1.年明け〜3月:「正月の出足の悪さ」が定常化してきた
この数年の流れでいうと、今年もやっぱり「正月の出足は悪く、2月で少し戻して、3月でまた鈍る」というパターンでした。今年に限らず、正月に地震があったり、コロナ禍が長引いたり、いろんな要因が重なって、「1月という月そのものに勢いをつけられない」構造が固まってきたように感じます。
昔であれば、正月休みに話をして、そこから一気に動き出すカップルが一定数いたのですが、ところが今は、プロポーズしても「式と指輪までは行かない」ケースが増えている。指輪までは行くのですが、、、プロポーズしたからといって、そのまま結婚式に一直線、とはならない。
12発ゼクシィでたくさん露出しているところには、「2月の山」がなんとか残っている。以前なら1月に来るはずの分が2月に来ているだけなので、2月の来館数だけ見ていると「そんなに落ちてないじゃん」と錯覚してしまうが、実際には1月~4月の総数で見たほうがよい。
そこに追い打ちをかけたのが、正月商戦期に起きた、いくつかの出来事でした。地方の有力会場アルカディアの倒産、目黒雅叙園のキャンセルの問題をはじめ、婚礼業界全体に対する信頼感を揺るがすニュースが、正月商戦のタイミングでボーンと出た。結果として、「結婚式そのものに前向きじゃない空気」が、業界の外にも、カップル側にも広がっていったように思います。
─ 2.4月以降:ゼクシィ来店特典ルール変更がもたらしたもの
今年の一番大きな転換点は、やっぱり4月です。昨年の新ゼクシィから1年が過ぎ、そして、今年は来店特典まわりのルールが変わりました。ゼクシィの来店特典のキャンペーンも、「来店+報告でギフト券がもらえる」形から、「2か月以内に成約して報告したらギフト券がもらえる」に振っていくルールになり、それがカップルの動きとうまくかみ合わないところもあり、大きなブレーキになっていると思います。サイトの閲覧数はそれほど落ちていないにも関わらず、来店だけが大きく減っている状況からも明らかです。その背景には、「来店特典でバラ撒きすぎるのはよくない」という“正義感”のある人たちの働きかけがあったわけですが、結果として起こったのは、「本当に守るべきもの」を見誤った状態でした。
「来店でのバラマキ特典はおかしい」「ギフトカード狙いはよくない」という“正義”と“正義のふり“が前面に出て、結果的に「通常来店そのもの」を減らしてしまった。式場にとっての本当に困るはフォト婚(写真だけで完結する世界)、プレゼント婚(その後の新規で騙されたと思うカップルが発生)、「やらない」という選択肢そのものこの3つに流れていきやすい状態にしてしまったわけです。
4月以降、ゼクシィネットの予約を全国で見てみると、閲覧数はそこまで落ちていないのに、予約が激減している。流入は広告やSNSでちゃんとあるのに、予約の手前でゼクシィから離脱している──これが、4月以降の大きな変化でした。他を足すと維持されているならよいが、その離脱が婚礼検討からの離脱にもつながることが古い世代の人には理解できないでしょう。めんどくさいとか、冷めたとか、そういう感情から婚礼検討をやめるカップルもいたでしょう。
そこに、各社の広告戦略のシフトが重なります。3月決算を終えた大手は本誌露出を増やしつつ、中小は「高くなったページ単価」を前に、減ページ・脱ゼクシィ・他媒体シフトと三者三様に分岐していく。ゼクシィ予算を減らして自社広告やエージェント対策などに振った会社ゼクシィ予算を減らしてほとんどそのまま広告予算減らしすぎて沈んでしまった会社WEB広告などがうまくハマって脱ゼクシィに成功した会社ここで差が一気についた2025年でもありました。
─ 3.ゴールデンウィーク〜夏:広告乱立と地方の苦戦
4月以降の回遊サイクルが「予約の場面」で崩れたことで、ゴールデンウィーク商戦にも大きな影響が出ました。以前であれば5月に跳ねていたところが、ここ最近は低調で今年も跳ねない。広告の変化に加えて、消費者の行動も変わっている。
結婚式の会場探しに一生懸命になるより、「とりあえず遊びに行く」「観光に行く」方に時間とお金を使う人が増えた。観光地は人で溢れているのに、婚礼マーケットには戻ってこない、という悲しい現象が起きています。
地方に目を向けると状況はさらに厳しい。大都市の広告やブランド力は、ウェブ上では地方にもガンガン流れ込んでくる。複数県版の媒体では、都心のページは立派で、自分の県には数社しか載っていない。そうすると、地元婚礼の「見かけの評価」が下がるんですよね。
地方のページが薄いと、「地元ではやらなくていいか」となりやすく、結婚式場探しのスターターとしてのゼクシィのボリュームと偏りが変わってしまったことで、地方の数値はさらに沈んでいったように感じます。
─ 4.9〜11月:数字の落ち込みと「お届けゼクシィ」の影
昨年の9月がそこそこ良かった反動もあって、今年の9月は「べこっと低い」印象が強かった。実際には媒体効果の変化が効いているのですが、現場から見ると「急に悪くなった」ように見えました。
さらに、今後の未来の婚礼市場を占う意味でも重要なサインとしてそこに出てきたのが「お届けゼクシィ」です。宮城・山形では、CMや駅サイネージも含めて大きく打ち出され、ANSのアンケート項目もさりげなく増えている。かなり肝入りのプロジェクトだと感じています。これは、良くも悪くも「本の配本とビジネスモデルを変える」話です。
本屋やコンビニでの面での露出とその場の衝動買いが減る一方で、ネットでゼクシィを知ってから本を取り寄せる人は増えるかもしれない。ただ、今年の関係会場の調査結果でも、「本の力」はまだまだ大きい。だからこそ、このお届けへのシフトが、エリアによっては「6〜8割で踏みとどまれるのか、5割を切ってしまうのか」が、来年以降の環境を大きく左右するだろうと見ています。
同時に、ゼクシィが効果を回復できなかったとき、投資効果に見合う「料金改定」や「商品設計の見直し」に踏み切れるのかどうか。ここも2026年以降に向けての大きなポイントになるはずです。
─ 5.SNSと口コミ:広告を凌駕し始めた「見えない減衰」
今年は、SNSと口コミの影響力がさらに一段階上がった年でもありました。Instagramだけでなく、TikTokもほぼ標準装備になり、コンテンツの同質化が進み、X(旧Twitter)やスレッズでは、業界人の本音やポジショントーク、カップルの不満が可視化され、フリーカメラマンなどが式場を名指しで批判する投稿も増える。良い情報も悪い情報も、フロー情報でありながら蓄積されていき、巨大なメッセージと化していく。
それらが検索で簡単に引っかかる時代には、「きれいな広告だけ」では集客が保てない。とはいえ、悪口を全部消せばいいわけでもないし、消すこともできない。
実感としては、「悪い情報が書かれたから全滅するわけではない」が、「一定の来館抑止には確実になっている」。行こうかどうか迷っている層にとって、負の情報はそのまま「行かない理由」になりやすく、負の情報をどう追いやり、存在してもアクションが続く状態にしていくかが重要で、今結婚式を挙げた人、ゲストが喜んでもらう状態をいかに作るかで相当和らぐと思います。
─ 6.業界再編とホテル・M&Aの動き
もうひとつの大きな流れは、業界再編です。
地方の豪族的な3〜4店舗クラスの会社が、後継者問題や借入金の問題を抱えながら、「手を挙げたくても挙げにくい」状態になっている。
一方で、TKPのように式場運営会社を複数持ち始めるプレイヤーも出てました。まさに執筆中に統合のニュースが飛び込んできました。外資がキャピタルとして持っている案件もある。新築が難しい環境の中で、「新築よりマシ」という判断から、リノベーション前提で買い上げる動きは、今後も増えていくと思います。
ただ、買う側も自信がない。過去の数字を見れば厳しさは一目瞭然で、「このハードで勝てるのか?」「この市場で勝てるのか」という問いが常につきまとう。新規開業と同じくらい、あるいはそれ以上にシビアな判断が求められた一年でした。
─ 7.「ネガティブな情報」とどう向き合うか
私は、基本的にネガティブな情報も含めて全部直視したうえで、「それでもどうにか生き残る道を考える」というスタンスで仕事をしています。
市場が減衰していること。広告のルール変更で数字が落ちていること。地方が都市部に吸い上げられていること。これらは、見たくないけれど、見なきゃいけない現実です。
ただ、それを「全部ゼクシィのせい」「全部政治のせい」にしてしまった瞬間に、打ち手がなくなる。そんな苦悩の一年だったな、と改めて感じています。
次回は来年の展望などについてお話していきます。
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