【WJ記事_17】成約率を上げる(2025/8/10,25_199号)

ー POINT ー
ロビーの混雑状況など施設自体のコンディションも成約率を左右する

─ 市場縮小から成約率が向上

ブライダル業界において「成約率」が上昇しています。全国平均はかつて42%前後にとどまっていましたが、直近のデータでは45%を超え、エリアによっては47%から48%にまで達しています。首都圏においても、以前は40%を切っていた水準が今や43%を超えるまでに上昇しました(※ゼクシィの定点観測データの積み上げ)。

 一見すると喜ばしい成果に映りますが、その裏側には「来館数の減少」という厳しい現実が横たわっています。成約率の上昇は必ずしも需要拡大を意味するものではなく、むしろ市場縮小の副産物でもあるのです。全国平均で4月5月6月が高くなっています。来店数を見てみると、今年は前年より多少悪く、さらに前年も前々年の新ゼクシィ前と比べて大幅に悪かったという状況があります。

成約率が上がっているというのはもう上がって当然ですが、何とか来店を踏ん張っても競合状況によっては根こそぎ負けてしまい、率が下がるところもありますが、多くの会場はそれなりの率を保っているので、実際にはもっと上げるためにはどうするかというところに着目していきたいと思います。

2025年春以降、新規来館は全国的に減少傾向を強めています。制度変更や社会的環境の影響も重なり、来館数はコロナ禍直後に匹敵するほどの水準に落ち込んでいます。

 現場の実感としても、従来のように「3~4件は見て回る」というカップルが減り、2件前後で結論を出すケースが目立ちます。当社調査では、全国平均の見学件数はこれまで2.4~2.7件で推移していましたが、直近では2.18件まで低下しました。

 また、本命だと考えていた式場を1件目の来店に選んでいるカップルは約30%、反対に最後に本命だと考えていた式場を訪問した割合もほぼ同数になっています。

─ 何を取りに行き、何を取らないのかが大事

私は先に寿司だとマグロを食べるとかいうタイプですが、先に白身から食べて、あるいは前菜みたいなつまみを食べてから、最後にトロを食べる人などに分かれます。コース料理が好きな人、肉ばかり食べる人、分かれます。いろんな価値観がありますがこの多様性という言葉を簡単に使うのは良くないんですがいろんな方がいる。その中で何を取りに行くのか、何を取りに行かないのか、というのが大事な話になってきます。

 ユーザーインタビューなどをしていても感じますが、成約率アップのためには、チャペルやバンケットばかりではなくぜひその他付帯設備のショールームでの工夫やブライダルサロンの見直しもこのタイミングで見てほしいなと思います。

ロビーの環境、時間帯によってコンディションがあります。時間帯別成約率は、各社出しているところが多いと思いますが、傾向としてロビーが込む時間帯に新規が来ると決まらない。であればこの時間はこっち側の裏側のサロンに直接来てくださいなどそういったリスクの高い環境の中での新規来店というのは、リスクを軽減するようにするべきであって、その条件下での成約率がもし限りなくゼロであれば、もうもはやその条件下で呼んでもしょうがないのでその時間呼ばないような仕組みに変える必要があります。

 獲れる人と獲れない人が分かれている場合は、獲れる人のトークあるいは立ち位置、立ち振る舞いなどを見ていく。要するに、お客様からの声を元にこうかなという仮説を立ててデータを積み上げて分析してみるといいでしょう。

実際にロビー周りの課題や控室の課題が意外とありますが、成約率が悪いのはお前たちのスキルが低いから悪いんだみたいになってしまいがちなので、経営陣もしっかりと言い分を聞いて、観察してみてほしいなと思います。

また、サロンの音楽、それからショールーム音楽いろいろあると思うんですけど、どうしてもなんとなくで流してますという会社も多いと思うんですが、心地いい音楽やノリのいい音楽などをバランスを見て考えてみましょう。

─ ひとつで二度、三度 美味しいはマーケ上重要

また、最近多いのは、新郎新婦の地元対決や、集まりやすい都市部と地方(地元)のバーサス、少人数だからのリゾートと何もない地元や都会の対策、などエリアをまたがった競争。東京だと集まりやすいですよね、観光もできるし、、、京都だと観光も兼ねられますよね、、、など。自分たちのエリアは、それより弱くみえるのか、式場として弱いのか、地元があまり好きでないのかなかなか勝ちきれない。例えば、集まりやすいとか旅行がてらとかの対決に対して、やっぱりついでに観光もできるし、こういうとこがいいかな、みたいなところと同対決するか。

観光という軸が消せない場合は、観光で戦うしかなく、気が付かない観光資源を話せるようにストックしていく必要があります。結婚式の時間が観光がいいのか、結婚式の後に観光がいいのかそこを考えながらお客さんに提案していけると、ロケーションのいい会場に対して戦えるのかなと。逆に言えば、二度おいしい三度おいしいっていうのはブライダルに限らず、いろんな商品購買のマーケティングすごい大事な話なので、自分たちが旅行を含めた二度おいしい三度おいしいがどう作れるかっていうのを考えて商品開発や営業をしてみてほしいなと思います。強い観光地は、繁忙期でみんなが行きたい時期はとてもおめかししておくところではないことや、宿泊の費用なども余計にかかるなど、リスクも話しながら、ふたりならでは(新郎新婦どちらかになることが多いが)の地元を愉しんでもらうことを、婚礼中以外でも楽しめることをうまく伝えるとよいでしょう。こういう機会だからこそ!としっかりと新郎新婦を説得して地域貢献してほしいと思います。

─ 成約後のキャンセル率なども考慮すべき

成約率を語る上で忘れてはならないのは、キャンセル率との表裏一体の関係です。新規の成約をゼクシィや経営陣に伝えるときは、たいていお申込金が入ると成約扱いですが、翌月などにしれっと成約が減っていることがあり、そこは指摘をする人が少ないです。インタビューをとっても、仮予約制度がないはずの式場がお金を払って仮予約した、という声もあり、本当の成約ではない成約がたまにあります。

また、特典や割引を理由に十分な検討時間を取らず契約し、後日キャンセルに至る事例も少なくありません。「今日中に決めれば割引」という強いクロージングに押されて契約したものの、プランナーとの信頼関係が崩れて解除されたケースも現場では度々見られます。即決は成果にもなり得ますが、リスクも伴う両刃の剣なのです。

そういう仮や成約は、ほかの式場やエージェントに相談に行き直し、最終的には別の店で決め直すこともあります。

また、打合せが始まってから「新規の人と打合せの人で話が違っていた」「見積もりが後から大きく変わった」などの理由で不信感が生まれ、その後の離脱につながるケースが後を絶ちません。

成約率をさらに高めるには、来館前からの働きかけが欠かせません。来館前のメールやSNS,ショートメッセージなどのやり取りにより、信頼残高が上がり、お互い事前準備もでき、決まる環境が整います。来館予約から来館までに、他店の情報を見たり、口コミサイトを見たり、SNSや公式サイトを確認したりするので、世に転がっている情報も成約の成否を左右する要素となっています。

リニューアル前から動画やコンセプトを積極的に発信した会場では、オープン前にもかかわらず予約が殺到しました。逆に情報を出さない会場は「行ってみないと分からない」と判断され、候補から外される傾向にあります。来館件数が減少している今こそ、来館前に期待値を正しく形成し、現場体験でそれを上回ることが求められます。

ただ、非常に言いにくいのですが、ハードなどがなかなか課題がある店でも頑張らないといけない、その時は、多少広告を盛ったり、来店特典、成約特典を盛ったり、フェアが楽しそうだったりおいしそうだったり、ちゃんと相談できそうだったり、プランニングがしっかりしていたり、多少のおしゃれができそうだったり、楽しい結婚式ができそうだったりの、期待値を作り、無理してきてもらい、“営業”で逆転勝利を目指すしかないので、その際は、昔ながらですが、ハードよりハート、で頑張って人と人のご縁をうまく作っていきましょう。

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