ー POINT ー
結婚式を意識していない層へもアプローチするメディアの活用
─ コスパの悪化したゼクシィ以外の道を模索する動きも
広告投資は、今のブライダル業界にとって最大のテーマと言っても過言ではありません。ゼクシィの昨年のリニューアルにより、コスパは落ちている状況にあります。ある郊外のゲストハウスでは、年間売上が約3億円。かつてはゼクシィ4ページ掲載で来館が安定していましたが、リニューアルにより掲載費が上がり、広告費は売上の15%を超える状態になり、4ページ出してもホームページをリニューアルしても欲しい結果が出なくなり、大きな決断をしました。最終的に2ページや1ページ、時にネットのみに減らし、代わりにインスタ広告やGoogle広告などを月額100万前後使いました。その店は集客が前年越え。広告宣伝費の占める割合がすでに上限を超えたレベルに達している会場や広告費を維持しているのに来店減という会場は少なくない状況になっていると思います。一方広告を減らし、さらに来店は落ちるが、“費用対効果“という目線でよくなる会場もよく見ます。
スタッフ全員がSNS発信に協力し、毎週のミーティングで投稿内容を共有し、紹介も促す。紹介経由やSNS経由が増えるという店もありますが、総来店数が増えるということではなく、打ち手に対して客はわずかに増えたが、欲しい件数には届かないということもよく見ます。
─ 理解の薄い上層部では追加投資できずに苦境に
一方で、ホテルでは違う悩みがあります。他の部門と合算した全体の収支構造をもとにした広告宣伝比率を念頭にしたマネジメントを受け、また前年踏襲の構成比、さらにはコスト削減がベースの年度の計画を組み立てることになり、さらに年度内の追加投資もできず、婚礼に理解の薄い上層部の場合、婚礼部門にだけ広告を投下することが難しく、年度内での収支がそろう、施行後の後払いのエージェントが優遇されるからです。
あるホテルでは、ゼクシィ掲載を維持しつつも、広告による自社ウェブへの誘導を強化しました。また、パンフレット請求をオンラインに集約してコスト削減をしたり、すでにゼクシィで集客できない会場では、ゼクシィ以外のほかのメディアを活用することでコストを抑えつつ、来店を維持するところもあります。
小さな事例ですが、地方では新聞折り込みなどを活用し、集客している事例もあります。印象的だったのは、新郎新婦の親が新聞に入っていた折込を切り抜き、子供に渡し、それをきっかけにカップルはそのまま来館するケースで、新聞折込は今も多少の力を持っています。
また、ポスティングも一定の効果がありますが、「街のゴミ箱に捨てられたチラシ」もあるので、捨てられるのはイメージ的にあまりよくありませんが、新聞折り込みなどと同様に、ゼクシィなどの結婚式を大きく意識した層以外にもアプローチできるという点は魅力の一つです。
─ アナログとデジタルの補完関係を作る
また、地方の看板広告も同様の効果があります。幹線道路沿いに掲げられた看板は、式場の存在を示します。看板もその場所に置いていると当然、色褪せるなどしていくため、メンテナンスが必要になりますが、そのコストは決して割に合わないというものではなく、一定の効果が生まれるものだと思います。看板を見た結果、来館者から「毎日通るたびに気になっていた」という声も活用している式場などからは聞かれることもあります。看板の力は効率的な集客ではなく、「認知の積み重ね」にあり、毎日目にするものに親しみを覚える面もあります。ブライダルにおいては、その安心感が最初の来館理由になることもあるため、看板広告を出し続ける意味はあると思います。
結婚を意識したゼクシィなどの専門誌購買者以外にも情報を届けるという意味では、地方都市では、ラジオやテレビもまだまだ現役です。ある地元FM局でCMを流したり、番組の提供を行うことで認知拡大が期待できます。ラジオは耳から刷り込まれるため、無意識に記憶に残ります。ただ、そのような努力もゼクシィの動きや競合の動きの変化に打ち勝てるほどのベース来店を作れているようには思えません。単に後押しをしてくれる程度です。
また、ここで重要なのは「紙(アナログ)かデジタルか」ではなく、「紙(アナログ)とデジタルの補完関係」です。
新聞折込をきっかけに来館したカップルの中には「結婚はまだ先だと思っていたけど、広告を見て急に意識した」と話す人がいました。スマホ画面より大きなサイズで目に飛び込む効果は、能動的でない人にもさりげない小さな行動で意欲を高める可能性があります。
また、ある会場は、Instagramで広告を流しつつ、同時に新聞折込も展開しました。SNSを見た新婦が母親に話し、母親は偶然新聞折込を目にして背中を押す。結果、親子で来館し即決。デジタルが娘を動かし、紙が母を動かしたようです。
─ 広告効果最大化のためにできること
来店最大化していくためには、商圏サイズや商品力と自社に求める成果のバランスで判断は変わりますが、ゼクシィ中心マーケテイングで足りない数は、こうしたメディアを横断した仕掛けをおこなっていくことで補完できるかもしれません。また、ゼクシィで仕掛けても、ゼクシィ以外の媒体も消費者が閲覧することもあります。そのため、広告は媒体ごとに完結してはいけません。紙を見たらポータルサイトやHPやSNSにたどり着き、時折、紙媒体に戻り、時には同タイミングでCMやネット広告が上書きする。連続性と整合性を作れなければ、せっかくの投資も効率的ではありません。紙媒体からデジタル媒体、デジタル媒体から紙媒体に移るときに、薄い記憶かもしれませんが、その記憶からのずれが大きいと意欲の断絶やなんとなくの違和感を感じます。この断絶や違和感を出来るだけ少なく効果的に認知をアクションに繋げていくことで、限られた広告宣伝費を有効活用できるのです。
もちろん、その会場のある場所や商圏や目標によっては、紙媒体は無視してもよいでしょう。検索広告やSNS広告がある程度ノウハウが整理されつつあり、さらにはAIに相談するというものが注目されてきておりますが、ただ、母数の足りない地方では、新聞、フリーペーパー、ラジオなどの影響力があり、また人と人のつながりや本当の評判による来店阻害も大きいということを理解して、その会場に合わせたチューニングを施していくことが広告運用の妙となるわけです。
地域性を無視して「最新のデジタル広告だけに寄せる」と、思わぬ落とし穴にはまります。広告は数字ではなく、自社のブランドを形成する利用者や取り囲む地域や人に根差すものだからです。
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